■「みんなゴールが一番好き」

「僕の中では若手もベテランも区別はなくて、選手はみんな同じように教えていければ。うまくなってほしいですし、みんなに点を取ってほしいです。小林悠も奏真も新もエリソンも、同じように点を取ってほしい」
 そうも語る大黒コーチの根底にあるのは、ゴールの喜びだ。「サッカーを楽しむことですかね。小学生のとき、ゴールを取るとやっぱ嬉しかったじゃないですか。みんなゴールが一番好きだと思うんで、いつまでもゴールを取りたいっていう気持ちがすごい大事やと思います」と、その原動力を明かす。
 4月9日の横浜F・マリノス戦で今季公式戦初出場したFW小林悠は、その少し前の練習から完全合流。大黒コーチらとともに、居残りでのシュート練習も行っていた。
「そんな(荒い)ボール入ってくるで。わざと変なボール入れてんねんから、止めな蹴られへんで」
「練習の練習にしたらあかんで、試合をイメージせな」
「もっと振りを早く! それじゃ取られんで」
 大黒コーチの関西弁が、小林らFW陣に降り注いでいた。その練習後の小林は、“新しい感覚”があったと充実の表情を見せた。そして、自分の中で試してみて採り入れてみたいと話すなど、ギネス記録を有するほどの立場でありながら貪欲な姿勢を見せていた。熱くギラギラしている2人が共鳴しているかのような光景は、それだけで見る者の心を震わせた。
 それほどに熱い姿を見せる大黒コーチは現役時、川崎の印象についてどう思っていたのか。沖縄キャンプではこう語っていた。
「現役の時にすごい行きたいなと思ったチームだったんです。点取りやすそうやなって(笑)。(中村)憲剛もいて、大島(僚太)君もいて、いいパサーがいっぱいいたんで、天国やなと思ってました(笑)」
 かつて憧れていた天国に、世界を渡り歩いたストライカーが新たな空気をもたらしている。
(取材・文/中地拓也)
【その8「サポーター」へ続く】

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