■日本代表の最長記録は「鹿島の鉄人」
日本代表では、鹿島アントラーズに所属していたMF小笠原満男が2006年2月18日のフィンランド戦で決めた自陣からのゴールが「最長記録」ではないか。
1-0のリード(小笠原のアシストでFW久保竜彦が得点)で迎えた後半12分、日本代表は自陣ペナルティーエリア前でDF宮本恒靖からDF中澤佑二へと横パスをつなぎ、ビルドアップを開始する。ペナルティーエリアの左前でボールを受けた中澤は、センターサークルから左に開きながら戻ってきた小笠原にボールを渡す。
1点ビハインドながら、フィンランドはしっかりとしたディシプリン(規律)を持つチームだった。日本のテクニックとパスワークに対応するため、自陣にコンパクトで堅固なブロックをつくり、その背後のスペースはGKミッコ・カベンがカバーする守備組織を崩さなかった。その守備を破るアイデアを実行するチャンスを、小笠原は待っていたのである。そして、そのときがきた。
フィンランドがボールを取りにこないのを見て、小笠原は、ハーフウェーラインの手前から思い切ってゴールを狙った。ボールは59メートルを飛び、ノーバウンドでフィンランドゴールに吸い込まれた。
サッカー選手なら、誰でも一度は「ロングシュート」に憧れるに違いない。私の少年時代では、日本代表とヤンマーディーゼルで活躍した釜本邦茂のロングシュートが印象に残っている。
1968年のメキシコ・オリンピック初戦、2-1で迎えた試合終盤、MFに下がっていた釜本は相手のゴールキックをカット、数歩持つと、35メートルの距離から右足を思い切り振り抜いた。矢のようなシュートがナイジェリア・ゴールに突き刺さり、勝利を確定するとともに、チームを大きく勢いづけた。
そのようなシュートを見ると、誰でも自分にもあのようなボールを蹴る力があると思ってしまうようだ。翌日、グラウンドに出た私は、ペナルティーエリアのかなり外から思い切り右足を振り回したが、ボールはゴールの枠さえとらえず、ワンバウンドしてゴールの横を通り過ぎていった。