大住良之の「この世界のコーナーエリアから」第161回「ロングシュートはみんなの夢」(2)世界記録は「キックオフ13秒」で爆誕、ギネス登録を逃した「J2」のFK、「日本代表」の最長記録はの画像
大住氏が発明した「ロングシュート距離計測キット」。これは、2006年2月のフィンランド戦で、小笠原満男が自陣からロングシュートを決めたときの距離。リプレーを見ながらキック地点を修正し、最終的に「59~60メートル」の値を得た。

 サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト大住良之による、重箱の隅をつつくような、「超マニアックコラム」。今回は、口をポカンと開けて見送るしかない、「特大の一撃」について。

■記録更新後「代表選手」としてプレー

「91.9メートル」の超ロングシュートを決めたのは、ストーク・シティのボスニア人GKアスミル・ベゴヴィッチ。2013年11月2日のサウサンプトンとのプレミアリーグ・ホームゲーム、開始直後に相手のキックオフからのボールを奪った味方のバックパスを受けたベゴヴィッチは、ゴールエリアを2メートルほど出たところから思い切りキック、それがワンバウンドして相手GKの頭上を越え、ゴールに転がり込んだのだ。

 それが「91.9メートルの『ギネス記録』だっただけでなく、キックオフからわずか13秒のゴールということも衝撃だった。ただ、試合は前半のうちにサウサンプトンが同点とし、この試合1-1の引き分けに終わった。

 ベゴヴィッチのこの記録を7年ぶりに4メートル余り更新したキングは、興奮を隠せなかった。

「もちろん、狙ったわけじゃないよ。でも、うれしいし、家族も誇りに思うだろう。悪いけど、ベゴヴィッチには、哀悼の意を伝えなければならないね。毎年クリスマスに発行される本に自分の名前が出るなんて、夢のようだね。できることなら、これからずっとこの記録が破られず、『ギネスブック』に載り続けて、孫たちに見せたいものだね」

 フルネームはトーマス・ロイド・キング。イングランド南西部の港町プリマスで生まれ、少年時代をスペインにある英国領ジブラルタルで過ごした。U-17イングランド代表の経歴を持つが、2023年からウォルバーハンプトンに所属している。ただし、控えのGKである。この「ギネス記録」の後、2024年にはウェールズ代表としてプレーした。

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