■「いかに自分たちがチャレンジできるか」
その一方で守備に関しては「セカンドボールに対するハードワークが割と全員できていたと思うし、何回か拾えない場面もあったんだけど、基本的にみんな拾う姿勢があった。そこに対してそんなにストレスを感じずにできた」と手応えを感じている中で「もっと攻撃でこうしたほうがと。守備よりも、攻撃でもう少し何かできたかなというのが頭に残ってます」と反省を口にした。
アタッキングフットボールというのは決して守備を軽視したり、放棄することではない。むしろ良い守備こそ、良い攻撃につながることはハッチンソン監督も強調しているが、攻撃的なスタイルの中でどう守備のリスクと向き合い、相乗効果にしていくかというのは現代フットボールの大きなテーマの1つだ。ただ、磐田が取り組んでいる方向性からすれば、守備を修正することが、攻撃を制限することになれば、本末転倒になってしまう。
まして山形のような厳しいアウェーの環境で、リスクに向き合いながら自分たちが目指す流動的な攻撃と守備の安定を両立させていくにはチャレンジのメンタリティに加えて、チーム全体の判断力とクオリティを高めていく必要がある。この山形戦も、攻撃が安全なところでボールを回しながら、外、外となってしまったのはメンタルだけの問題ではない。ただ、チャレンジしていくことでしか、そうした判断力やクオリティが上がっていかないことも確かだ。
ハッチンソン監督は改めて「リーグ戦8試合で、私もまだ3ヶ月目なので、ジェットコースターのように結果も出たり出なかったりすると思うんですけど、いかに自分たちがチャレンジできるか。うちもいい選手が揃ってますし、連れて来れなかった選手もいるので。その中でチャレンジしながら、いかにリスクをかけられるかだと思います」と主張した。
おそらく、継続的にこのチームを取材すれば、今後も似たような言葉を何度となく耳にしていくことになるだろう。おそらく、そこに魔法もなければ近道もない。ただ、そうしたフットボールに向き合いながら、攻撃面に課題が多く見られた中でもアウェーの山形戦というタフな試合で勝ち点1を持ち帰れることは確かな成果と言える。
(取材・文/河治良幸)