■トランジションの発生を想定していたが

 3バックの右に起用された高井幸大がビルドアップの配球を得意とする選手ということもあり、菅原がワイドの起点となることで、菅原からのクロスやインサイドの久保を絡めてのコンビネーションなど、右側からも数多くの攻撃を繰り出した。その一方で左からも中村が得意のドリブルで縦を狙うことで、5ー4ー1の外側を活用しながら前田がバックラインの背後を狙って、縦横に揺さぶりをかけることは前半を通してできていた。
 しかし、なかなか大きなスペースが空いてこない中で、だからこそ一瞬のタイミングやボールタッチの精度、つまりはプレーのクオリティが、サウジアラビアのゴールをこじ開けるにはいたらなかった。
 菅原は今回の日本とサウジアラビアの構図を2021-22シーズンのUEFAチャンピオンズリーグ準々決勝のマンチェスター・シティやアトレティコ・マドリーに例えた。その試合はアトレティコのディエゴ・シメオネ監督が5ー5−0とも言える超守備的なシステムを使っていたが、様相は確かに通じるものがある。
 おそらく森保監督としてはサウジアラビアが通常の4バックで、もっとアグレッシブに来る分、攻守のトランジションがもっと発生することを想定していたはず。最終予選を通して、ウイングバックのファーストセットだった堂安律三笘薫の攻撃的なコンビが、ロングボールを多用する相手の圧力に押し下げられて、なかなか本来の攻撃性能を発揮できない試合が続いていた。サウジアラビアが4ー2ー3ー1や4ー4ー2であれば、菅原が相手のキーマンであるサレム・アル・ドサリをサイドバック的なポジションで封じながら、中村を左のウイングのような役割にできる。

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