■「幸せだった」日本円が高かった時代

 その国の通貨の価値が下がるということは、逆に言えば外貨の価値が上がることです。

 僕は、昔、外務省OBたちと仕事をしたことがあったのですが、その中に第1次世界大戦直後のドイツ勤務を経験した元外交官がいました。外貨(ドルとか、円)さえ持っていれば、どんな贅沢をしても金が減らなかったそうです。

 羨ましい限りです……。僕は、幸か不幸か、そんなハイパー・インフレーションの社会に身を置いた経験はありません。アルゼンチンには何度も行っていますが、最初に訪れたのは1978年ですから、ハイパー・インフレーションより前でしたし、21世紀にはインフレは収まった後でした(ただし、緊縮財政による生活難の時代)。

 ですから、元ドイツ勤務の外交官のような贅沢はしたことがありませんが、でも、1990年代から2000年代は1年のうち3~4か月は海外に行っていたのですが、日本円が高い時代(最も高い時期には1米ドル=80円!)だったので、世界中のほとんどの国で「ああ、日本より安くて助かるなぁ」と思えました。幸せな時代だったと言えるでしょう。

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