■広島がボールを握り返した「鮮やかな修正」とは

 また、川辺駿田中聡と縦関係を作るのが多く、「田中聡の周辺を乾貴士や松崎快がうまく使っていました。そこは狙っていたようで、田中の左右を広島が守備時に埋めるより先に使おうというプレーも見られていました」
 右サイドのマークがはっきりしなかったこと、乾貴士をつかまえきれなかったこと、本当は広島が前から行ってリズムを作りたかったことなど、いくつもの要因によって広島は苦しい前半を過ごす。
 しかし、後半に広島は攻守でテコ入れを図る。まずは新井直人を塩谷司に替えたことで、右の並びを見慣れた形に。その結果、「いつも通りのハッキリとしたマンツーマンが見られました。乾貴士には塩谷司がしっかりとついて、山原怜音には中野就斗が、高木践には加藤陸次樹がという形です」。
 攻撃では、前半は川辺駿がコンパクトな相手に対して前に行っていたが、後半は中野就斗の横を意識することで、右サイドで数的優位を作っていたという。
「また、左サイドの東俊希が対面の北爪健吾を引っ張り出すような形を作ることで、その背後のスペースにジャーメイン良が流れるようになっていました。これで清水のCBが外に引っ張られます。こうして徐々に広島がボールを握り出したのです」
 そこに快速の中村草太を入れて、背後を狙う動きも入れることでさらにチャンスを伺った。
 互いに戦術戦の様相も呈したこの試合は、両チームにとってどのような捉え方なのか――。
(語り:二階堂悠)
(「その3」へ続く)

【にかいどう・ゆう】
1984年5月17日生まれ。宮城県出身。筑波大学大学院卒業後にメキシコ留学を経て、杭州緑城(中国)のコーチに就任。2014年からモンテディオ山形のコーチ、2017年から川崎フロンターレのコーチを務めた。川崎ではクラブの国内7冠達成に寄与し、24年シーズンを持って同職を退任した。

(3)へ続く
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