■左サイドであれば「ドリブル」を選択していた
序盤からホームチームが優位な状況に立っていた中で、先制点を呼び込んだのが右サイドだ。佐々木旭が右サイドバックのポジションから中へと強気の姿勢で持ち運び、縦に入れたことが契機となって、右サイドの伊藤達哉にボールが渡る。その伊藤の素早い動作のクロスから、山田新がゴールネットを揺らして見せた。
伊藤から山田へのクロスは、この場面が2つ目。前半12分にも似た攻撃があった中で、練習でも繰り返していた形をモノにしてみせたことになる。
アシストした場面で新加入ドリブラーにクロスを選択させたのは、右サイドでの攻撃をゴールに結びつけるための「模索」。
というのも、伊藤はかつて筆者に「向こう(海外)でやってたときは左サイドで全部外に張って、味方と連携してっていうよりは1対1でいくタイプだった」と、そのドリブルで強みを出してきたとしていた。
しかしこの試合は、「今日のピッチの硬さは今まで経験したことなかった」と言うほどのピッチコンディションでもある。加えて、「自分が右サイドのときは、ドリブルで仕掛ける数は左よりは多分減ると思います。右サイドでどうドリブルで仕掛けていくかは、自分でも今、模索しています」と最適解を探している真っ最中でもある。
だからこそ、もしあのアシストをした場面が仮に左サイドだったら「自分は仕掛けたくなっちゃう」と話すもので、「あの場面のようにドリブルしないでクロスを上げる」ことも右サイドでどうすればいいかを探っていたからこその判断だった。
「左と右のときで自分のプレーの選択肢ももちろん変わってくる。今後、どうやったら自分の良さがより強く出せるかを模索しながらやっていきたい」
まずは結果を見せた伊藤は、さらに脅威となる姿を見せようとしている。
「Jリーグでこのピッチはない」
コンディションを言い訳にするつもりはないが、日本ではそのドリブルを遮るものはない。
(取材・文/中地拓也)
(佐々木旭の中編へ続く)