■テレビマネーは「安定期」に入った

 欧州のクラブの収益増を牽引してきた「テレビマネー(放映権料)」は「安定期に入りつつある」―。「Football Money League」というレポートを毎年発行している世界最大の会計事務所「デロイト」は、2025年版のレポートでそう説明している。平たく言えば、これ以上の放映権料の増額は望みにくいということだ。そのため、レアル・マドリードを筆頭とした「トップ10」のクラブの収益増は、主として「コマーシャル」面の増加によっているという。スポンサー収入と、グッズなどの小売り収入である。

「デロイト」によれば、サッカークラブの収入は大きく分けて3つの柱からなる。第1は入場料収入を中心とした「マッチデー」、第2は「放映権」、そして第3が「コマーシャル」。以前はトップ10でも放映権収入が40%を超えるクラブが大半だった。収益が11位~20位のクラブでは今もその構造は変わらないが、トップ10では「コマーシャル」の増加が顕著だという。

 レアル・マドリードは2023/24シーズンに前年比125%の約10億5000万ユーロ(約1680億円)という世界のサッカークラブ史上最高の収益を計上した。ホームのサンチャゴ・ベルナベウ・スタジアムの大改装で新しいVIPシートをつくり、キャパシティも増えたことで「マッチデー」の収入を前年の倍以上の2億4800万ユーロ(約396億3000万円)に伸ばし、グッズ売り上げの伸びによって「コマーシャル」も前年比120%の4億8200万ユーロ(約771億2000万円)へと伸ばしたという。マーケティングの「世界戦略」が実を結び始めているということだろう。

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