■かつての川崎とかつての鹿島の「中間点」
そもそも、鬼木監督は鹿島のプレースタイルについて熟知しながら監督就任のオファーを受けたのだ。目指すべきスタイルについては、すでに方向性は定まっているに違いない。
昨年の11月、J1リーグ第35節で、川崎フロンターレは鹿島アントラーズと対戦し、1対3のスコアで完敗を喫した。川崎は前半のうちに3失点を喫し、後半アディショナルタイムに1点を返すにとどまった。
かつて、川崎の全盛期には川崎は鹿島との相性が良く、圧勝を繰り返していただけに、川崎の時代が終わったことが明らかになったような試合でもあった。
この試合、前半のうちに3点をリードした鹿島は、後半は無理せずに勝利という結果を目指した試合運びを見せた。
それを見ていて、「いかにも鹿島らしい戦いだなぁ」と思っていたら、試合後の記者会見で鬼木監督が鹿島の試合ぶりについて「時間稼ぎなども含めて鹿島らしい試合運びだった」といった趣旨の発言をした。この頃には、次年度には鬼木監督が鹿島の監督に転身するということはすでに確定的に語られていたので、「公式会見の席で鹿島のプレースタイルについてあんなことを言っていいのか?」とビックリしたのだが、鬼木監督はそのへんも含めて鹿島を率いることを決断したのだ。
おそらく、これまでの鹿島以上にポゼッションにはこだわりを見せるチームになるだろう。だが、川崎でやっていたようなショートパスをつなぐサッカーを実践することは不可能だろう。
川崎時代よりも長いパスを使って、ボールを持つ時間はこれまでの鹿島よりは長くなる……。そんなサッカーが鬼木監督の鹿島ということになる。
かつての川崎と、かつての鹿島の中間的なサッカー。それが、どこまで鹿島寄りになるか、どれだけ川崎寄りにするのか……。一刻も早く、新しい“鬼木アントラーズ”が完成することを期待したい。