■バレリーナの「トーシューズ」

 まったくの余談をふたつ。バレリーナは「トーシューズ」を履く。クラシックバレーではつま先立ちでポーズをとったり回転するのだが、そのために不可欠なシューズである。つま先の部分が平たく、固くなっているのだが、いくら特別なシューズを履いたからといって、常人には真似られない芸当だ。一度このシューズを履いて「トーキック」をしてみたいものだが…。

 余談その2。ネットで「toe kick」を検索すると、思いがけない画像が出てくる。家庭のキッチンの写真である。古い辞書には出ていないが、最近のキッチンボードの最下部は、4~5センチ引っ込んでいる。これを「toe-kicks」と言うらしい。日本語では「蹴込み」というのだそうだ。立ち仕事をするとき、足先が少し内側にはいることで姿勢がずっと楽になる。「人間工学」のきめの細かさに感心する。

 閑話休題。「トー」とは英語で「toe」と書き、正確な発音は「トオ」ではなく、「トウ」である。「トゥー」と表記する人もいるが、このカタカナを読むと「two」のようになってしまう。「トウキック」がいちばん英語の発音に近いのだが、最近の日本語では「go」を「ゴー」「soda」を「ソーダ」そしてサッカーでも「goal」を「ゴール」と表記するように、「オウ」の音を「音引き」で表記するのが通例になっているので、この記事では「トーキック」とする。

  1. 1
  2. 2
  3. 3