■垣間見られた“鬼木色”

 鬼木監督は川崎でいくつかのシステムを使い分けてきた。三笘薫守田英正田中碧らを擁した際に用いたのは4-3-3。このシステムが鬼木フロンターレの代名詞のようにもなっているが、それ以外にも4-2-3-1と4-4-2を使っている。
 とはいえ、システム以上に大切なのはどう戦うか。少なくとも、この日に行われた30分×3本のうちの1本目では、その“鬼木色”が垣間見られた。
 もちろん、鬼木達監督がチームを実際に指導してまだ1週間しか経っておらず、戦術の本格的な落とし込みはできていないため、どれも“雰囲気”にはなる。その中においても、狙いのようなものが見えたという意味である。
 この試合で左サイドに入った松村優太はワイドに張る形を取ることが多く、ボールを持てばドリブルで勝負を仕掛けようとした。一方で、右サイドでは人数をかけた攻撃をしようとする意図が感じられ、さながら川崎フロンターレでの家長昭博の右サイドとマルシーニョの左サイドにシンクロしているように見えた。
 実際、松村は試合後に「張ったポジションからっているのは常々言われましたし、1本目はサイドバックやセンターバックとの距離感が少し遠かったかなと思います。途中からは張りながらも、前線の選手とスペースを共有しながら、入れ替わりながらやろうとしましたし、1本目が終わったあとに鬼木さんと少し話をして、距離感の話だったり、前の選手との入れ替わる話をして、2本目のほうが周囲の選手との距離感は良かった」と振り返り、サイドで勝負を仕掛ける立場だったことが伺える。

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