■プロの看板がもたらした「もの」

 もちろん、チーム力としてI神戸のほうが上であったことは誰の目にも明らかだ。だが、それでも相手チームがしっかりと抵抗できるのがWEリーグのサッカーなのだ。

 かつて、なでしこリーグが日本のトップリーグだった時代、「3強」と対戦する他のチームは「3強」に対してリスペクトしすぎていた。最初から引いて守るか、強い抵抗を示すこともできないまま、敗れさるような試合も多かった。

 だが、WEリーグが発足し、「プロ」の看板を背負って結果を求めてプレーするようになった結果、「3強」と対戦するチームも戦術を工夫したり、ハードワークすることで、なんとか一泡吹かせようと必死の抵抗を見せることが多くなった。

 WEリーグ発足によって、日本の女子サッカーで変化したことのひとつだ。

 広島が、格上のI神戸相手に戦術的な守備で対抗し、前線のハードワークで少ないチャンスをものにして勝利したのは、そんなWEリーグ時代の女子サッカーを象徴するような試合だった。

 昨シーズンはリーグ戦で5位に入り、リーグカップで初タイトルを獲得した広島。今シーズンはリーグ戦では11節を終えた時点で4位。そして、リーグカップ(クラシエカップ)で連覇を達成。

 広島という、WEリーグ発足に当たって新たに立ち上げられたチームが、「3強」を脅かす地位をつかんだことは間違いないようである。

 今後は、タイトルを獲得した自信を背景に、少しでも個人能力の面でも上位の「3強」に迫っていってもらいたいものである。

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