大住良之の「この世界のコーナーエリアから」第153回【「奇跡の12ゴール」最強スペインが産声を上げた日】(4)ヘディングの名手が「先制」も…直後に冷水、チームを救った「代表36試合8ゴール」の破格DFの画像
2024年、史上最多4度目のヨーロッパチャンピオンに輝いたスペイン。その強さの源流とは…。撮影/原悦生(Sony α1使用)

 サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト大住良之による、重箱の隅をつつくような「超マニアックコラム」。今回は、17歳の天才ラミン・ヤマルの1得点4アシストの活躍もあってEUROで優勝したスペインが、苦しみから這い上がり、無敵艦隊へと名乗りを上げるキッカケとなった「奇跡の試合」。本当にあるんですね、そんなことが…。

■ようやくの「先制ゴール」も…

 ようやくスペインに先制点が生まれたのは15分。右で小さなクリアボールを拾ったマセーダがゴール前に入れると、走り込んだサンティリャーナがヘディングで叩き込んだ。

 この日のスペインで唯一30代だったサンティリャーナは、本名をカルロス・アロンソ・ゴンサレスと言ったが、どの名もありきたりだったため、生まれ故郷のサンティリャーナ・デルマルという町の名前で呼ばれていた。蛇足だが、この町の西南郊外には、旧石器時代の壁画で有名なアルタミラ洞窟がある。

 サンティリャーナは1971年にラシン・サンタンデールからレアル・マドリードに移籍し、1988年まで17シーズンプレー、461試合に出場して186得点を記録した。身長は175センチと、けっして大きくはなかったが、ヘディングの名手として知られていた。このときも、彼の卓越したジャンプ力とヘディングの能力がフルに生きた。

 勢いづくスペイン。しかし、それに冷水をかけられる。24分、スペインのクリアを拾ったマルタのMFシモン・トルテルが中盤から強引なドリブル。ゴール正面でそのパスを受けたFWマイケル・デジョルジョが右足を振り抜くと、シュートは前に立つスペインDFマセーダの体に当たり、GKブジョの逆をついてワンバウンドしながらゴール右に吸い込まれたのである。

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