■再会と別れを迎えた日

 指揮官が「悲願」としていたACLの舞台は過酷だ。体力面でハードであれば、日本と離れるがゆえのそれぞれの事情もある。飛行機などの移動トラブルもあれば、食事や気候面での順応も必要となる。そのような中で選手や監督・スタッフ陣が戦っているという当たり前のことを感じざるを得なかった。
 出会いと別れが交錯するのが人生だ。かつての教え子とタイで再会する一方で、父親との別れを迎えるという一日を、仮に自分がその立場であればどのように過ごすのか。少なくとも、チャナティップへ向けた鬼木監督の笑顔はまるで父親のように慈悲に満ちていた。エレベーターまで笑顔で迎えに行く足取りの軽やかさなど、どう表現したらいいだろうか。
 個人的な事情も含むのでここまで書いてきませんでしたが、川崎フロンターレの退任が決まった中で、その姿勢が伝わればと記事にしました。
(取材・文/中地拓也)
(後編につづく)

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