■2日間のタイ滞在時の様子

 23日、鬼木監督は試合会場であるパトゥムターニースタジアムで前日会見を午前中に行い、夕方に公式練習を行った。午前の会見ではとても和やかな表情が見られたが、夕方の練習ではやや険しい表情が見られたのはたしかに感じていた。一方で、この日の練習である選手が負傷気味だったこともあって、それが要因なのかとは思った。少なくとも、大きな事情を感じているようなレベルの険しさではない。
 加えて、24日の試合でもそんな様子は感じられなかった。試合中も、そして、試合後会見においても。改めて会見の音源を聞き直したが、どこにも揺らぎはない。鬼木監督のプロ魂を、そして、自身の事情よりもチームにすべてを注ぐ姿を改めて感じたのだった。
 詳細は書かないが、その葬儀は鬼木監督の親族を喪主として千葉県内で行われた。そして10月29日、チームはアウェイでの柏レイソル戦を迎えている。実家から近いスタジアムでの一戦。鬼木監督にとっては、気持ちの入った一戦だったに違いない。それだけに、試合中、その一挙手一投足に注目していた。
 しかし、抱えていたであろう心理的動揺は微塵も感じさせない。個人的な感情ながら、“勝ってほしかった”と強く思った。すべてをチームに注ぐ姿が、少しでも報われてほしいと。この試合の70分に1点ビハインドのスコアを振り出しに戻した橘田健人のゴールは、それに応えるかのような気持ちのこもったものだった。

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