目はすでに赤くなっているように見えた。黄金に染まった観客席とともに、選手、スタッフとともに撮影を終えた直後のベガルタ仙台・森山佳郎監督のことだ。ベガルタ仙台とV・ファーレン長崎とが戦ったJ1昇格プレーオフ準決勝の会見場に向かうべくピッチを歩くその顔を見れば、感情的に大きく動いていたことが伝わってくる。
そして実際、その会見場で森山監督は試合前にはじき出していた“見込み”を口にした。「僕自身も選手にはいろんなシナリオの話をしていて」と話す指揮官は、J1昇格を懸けたこの重要な一戦でさまざまなシミュレーションを実施。そのうえで、戦い方を選手と共有しようとしていた。
指揮官は続けて、「2点差以上で勝つのは5%っていう話をして、1点差で勝つのが30~40%っていう話をしていたのに、4点も入るというのは僕もまったく1&も予想していなかったです」と言葉にするのだ。
たしかに、長崎は最終節まで5連勝。しかも、この日の舞台である「ピースタ」では3試合負けなしを誇っていた。今秋に開業して以降、街の新たなシンボルをなっているこの地は土つかずの“要塞”で、チームの勢いがその輝きを強めていた。
「ここ数試合だけ見ても、単独で2人3人をかわして一気にカウンターで得点を取ってしまう外国籍選手の対応にもかなり苦戦することが予想されていた」
そんな指揮官の戦前の想定を、選手が見事に封じて見せた。