■「超ラッキーゴール」ではない
最後のシーンだけ見ると「超ラッキーゴール」のように思えるかもしれない。しかし、アクシデントのようなブラジル守備の混乱を除けば、日本の得点はすばらしいものだった。
この直前、猛攻をかけたブラジルは、日本に奪われても、ものすごい切り替えの速さですぐに奪い返し、また攻め込んだ。そして、ペナルティーアークの手前でロナウドがボールを受け、松田直樹をかわし、さらに前に立つ田中誠を抜きにかかろうとした。そこに戻ってきたボランチの服部年宏が右足を出してボールを奪い取り、すぐ右にいた伊東に渡したときから攻撃が始まる。
伊東は時間をかけずに左のスペースに降りてきた城にグラウンダーのパス。城はワンタッチでサポートの前園真聖に落とす。そして前園は追走してきたフラビオ・コンセイソンをいなしてボールをキープ、味方が駆け上がる時間をつくると、左ワイドに開いた路木にパスを出したのだ。
このとき、自陣ペナルティーアークの10メートルほど前から城へのパスを通した伊東は、足を止めずに前線に上がり、自分の前にいた中田英寿が路木のサポートのために左に寄ったときには、最前線の城と並ぶ位置まで上がっていた。そして伊東を見ていたロナウド・グイアロがボールにつられてアウダイルのほうに走り寄ったときには、完全にフリーになっていたのだ。