■高いところから「大衆の味方」アピール

 話がどんどん「記者席」から遠くなってしまったが、ともかくオオカミから乳をもらって成長し、やがてローマを建国したロムルスが、当時糾合した「3つの部族」を「トリブス」と命名した。「トリ」には「3つの」の意味がある。そしてさらに、平民階級の保護にあたる3つの部族の代表者を「トリブヌス・プレビス」と呼んだ。「護民官」と訳されるこの「トリブヌス」が、「トリビューン」の元となったのである。

 アメリカに『シカゴ・トリビューン』という有名な新聞があるが、この「トリビューン」は「護民官」を意味するもので、「大衆の味方」をアピールしているのだろう。

 しかし「記者席」までは、まだまだ遠い。ローマの「護民官」は議会で一段高いところに立って演説することになっていた。そして、この一段高いところ(演壇)自体を、「トリビューン」と呼ぶようになったのである。

 すなわち、「プレス(あるいはメディア)・トリビューン」は、「一段高いところから試合を見渡す記者たちの場所」という意味なのである。言ってみれば「上から目線」で、なるほど、私たち記者は、ピッチ上で考え、試合を進めた監督たちに対し、ときに「上から目線」のような質問や口の利き方をして、嫌われる。

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