大住良之の「この世界のコーナーエリアから」第149回【無料なのにVIP待遇「サッカー記者席」の大問題】(1) Jリーグでは設置が「義務化」も…監督たちに嫌われる「上から目線」の画像
10月にはV・ファーレン長崎の新たなホームスタジアム「ピーススタジアム」が誕生。収容人数は約2万人だという。この新しい本拠地にも…。撮影/原壮史(Sony α1使用)

 サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト大住良之による、重箱の隅をつつくような「超マニアックコラム」。今回は、有料の観客席よりも優遇される無料の記者席の「問題点」と課せられた「責任」について、自分自身に対する「戒め」とともに、立ち止まって考える。

■メインスタンド中央部に「屋根付き」

 取材の日、私は遅くてもキックオフの1時間前にはスタジアムに到着し、そのまま記者席に上がる。決められた(決められていないこともあるが)席に座り、バッグからノートと筆記用具、そしてパソコンなどを取り出し、机の上に並べてピッチを見渡すと、すうっと心が落ち着く。だが、このとき同時に、私の心は小さな痛みを感じている…。

 プロの試合を行うスタジアムには、「記者席」は必須だ。Jリーグでも、2024年の「スタジアム基準」で、「メインスタンド中央部でスタジアム全体が見渡せる位置に屋根付きで設置すること」「ノートパソコン、ノートが置ける十分な広さの机と電源を設置すること」がJ1からJ3までのスタジアムで必須条件となっている。さらにJ1とJ2では、wi-fiや暖房の設置も順次設置するよう指導されている。

 「記者席」は、英語では「Press Tribune(プレス・トリビューン)」あるいは「Media Tribune(メディア・トリビューン)」と呼ぶのが普通だ。

 辞書を引くと、「トリビューン」というのは、ラテン語の「トリブス」から生まれた言葉だとある。

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