■秋葉監督「やはりフットボールは甘くない」
清水にとっては悪夢のような展開だった。前半からチャンスを多く作りながら前半をスコアレスで折り返す。そして後半30分、待望の先制点をゲット。しかも、それを決めたのが下部組織出身のキャプテン・北川航也だったのだから、この時点ではサッカーの神様もできすぎたシナリオを用意したかに思われた。
しかし、結末は違ったものとなった。後半35分に同点弾を浴びると、同42分には勝敗をひっくり返すゴールを喫する。勝てば他会場の結果にかかわらず昇格という試合で、終盤での逆転負けに終わったのだ。秋葉忠宏監督が「やはりフットボールは甘くないなと。一筋縄ではいかないなという、簡単に昇格はさせてもらえないんだなっていうのを痛感するゲームでした」と話すような展開となった。
当然、選手の受け止め方にもそれは現れる。試合を終えた乾貴士に率直な思いを聞けば、「情けないですね。はい。その一言です」と悔しさを表情に見せる。
その乾は試合後の場内1周でチームの最後尾を歩いており、その表情と視線の向かう先からは、さまざまな思いが去来していることが感じられた。
どんなことを思っていたのか――。
そう尋ねれば、「うーん、何してるんやろなっていう。去年と全く変わってないなっていう感じですかね」と言葉にする。
乾が話す“去年”とは、2023年10月28日のロアッソ熊本戦のこと。第38節の静岡ダービーを制した清水は順位を2位に上げており、その勢いのままにJ1昇格を手にすると思われた。事実、同39節でいわきに7-1で圧勝していたが、同40節の熊本戦で1-3の敗戦。しかも、先制しながらその後、3失点して逆転負けしたのである。その影響もあって、最終節終了時点での順位は4位。目前としていたJ1復帰を最低でも1年、先延ばしせざるを得なかった。