■最低限の結果と課題

 堂安と久保をあえて縦に侵入させた戦法を、中央ではね返せばいい、という共通認識のもとで、オーストラリアは伊東に対しても講じてきた。状況を見て右から左にまで顔を出し、個の力で風穴を開けようとした伊東は中村にこう言及した。
「(中村)敬斗は後半途中から出ても自分の力を出す能力をもっているけど、それでも今日は特にキレていた。あれだけドリブルで相手を抜く敬斗を見たのはひさしぶりですよ。フランスでは相手の身体能力も高く、そう簡単には抜けないので」
 試合は中村が左サイドから2度突破し、勢いに乗って放ったクロスが相手のオウンゴールを誘発して引き分けた。前半から左で三笘、右で堂安と久保が放ち続けたジャブが効き、フレッシュな中村と伊東がより生きたとも受け取れる試合展開のなかで、両翼を担った選手たちもさまざまな課題を抱えたままチームは解散した。
 それでも、行き着く結論は変わらない。伊東がチーム全員の思いを代弁した。
「ホームで勝たなきゃいけなかったけど、最低限の結果はえられたと思う」
 6月シリーズから導入された「攻撃的な3バック」のもとで、特に左右のウイングバックは多士済々な選手たちが集う最激戦区になった。選手ならば誰でも先発で出たい。エゴにも近い思いを成長への糧に変え、出場機会が訪れたときには異なる形で躍動する森保ジャパンは、連勝こそ途切れながらも3勝1分けと無敗をキープ。2位グループに勝ち点5ポイント差をつけて、グループCの首位を独走している。
(取材・文/藤江直人)

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