スポーツ競技で勝つためには、心身の充実が必要だ。フィジカル、メンタルともに相手を上回ってこそ、勝利を手にできる。もしも、どちらかが欠けていたなら、諸刃の剣となって自分に襲いかかってくることもある。そうした厳しい現実を突きつけられた「サッカー秋の陣」について、サッカージャーナリスト後藤健生が考察する。
■負けなしが続いたことで生まれた「過信」
最近のFC町田ゼルビアが、なぜチーム・コンセプトを徹底できないのか? その原因は多岐にわたるので、一概に決めつけるわけにはいかないが、彼らの戦力強化や首位に立ち続けたことによる選手たちの心理面の変化というのが原因の一つであるような気がするのである。
東京ヴェルディの選手たちが、城福浩監督が嘆いたように戦う姿勢を失ってしまったのも、同じようなメカニズムが働いたのかもしれない。
シーズン開幕の頃には、東京Vの選手たちは死に物狂いだったはずだ。戦力的に苦しいことは、自分たちでも感じていたことだろう。だから、彼らは全力を尽くして真っ向勝負に挑んだ。そして、次第に選手個々の能力、チームの戦力、そして順位が上がってきた。
最近はJ1リーグの上位につけ、負けなしも続いていた。
もちろん、好成績が続いたことで自信を持ってプレーすることができるようになったことは、大きなプラス材料だ。リードしながら試合の終盤を迎えると、「いつ、同点にされるか」とオドオドしながらプレーしていたのは過去の姿。しっかりとゲームを締めることも彼らは覚えていた。
だが、そこには同時に自分たちの力についての過信が生まれる危険も潜んでいた。