■シャドウの組みを左右するもの
まさかのオウンゴールで1点を失った後、森保監督は2シャドウをスイッチ。三笘と鎌田という初めての並びにトライした。それは左ウイングバック(WB)に中村敬斗(スタッド・ランス)を置いてグイグイと仕掛けさせ、三笘も中でフィニッシュに関わりつつ、あわよくば局面打開に絡むことで、攻めの厚みを増していくという思惑があったからだ。
それを2人は確実に遂行。中村の大胆な仕掛けから値千金の同点弾が生まれた。その左サイドの連携を右の鎌田はしっかりとコントロールしていた。この時間帯の右WBは伊東純也(スタッド・ランス)でやはり槍タイプということで、鎌田は”もう1人のボランチ”としてゲームを落ち着かせ、効果的なパスを供給することに徹していた。
そういう選手が1人いるだけで試合はかなり安定する。本人は完全に流れに乗り切れなかったのか、ボールを失うミスもあったが、一番持ち味を出していたのではないか。
このようにシャドウの組み合わせは2人と周囲の特徴、試合展開、相手との噛み合わせによって成否が左右される。中国戦で光った南野・久保がこの試合では停滞したのも、相手の強固な守りによるところが大だろう。三笘・鎌田の時間帯はオーストラリアも落ちていたし、前半よりスペースがあったから機能できた。三笘・鎌田という新たなコンビをトライできたのは収穫と言えるが、次は頭から出せるとも限らない。
いつ誰を出すのか…。それは指揮官の的確な判断にかかっているのである。
(取材・文/元川悦子)