■垣間見せた経験の厚み

「であれば、ACLEの試合は大きな意味を持っていましたよね?」
 筆者の質問に、「蔚山戦?」と確認した瀬川は、神妙な面持ちでこう答える。
「久しぶりのスタメンだったし。今年初めて前で出ましたし。自分の良さを出すっていうのを意識して出ました」
 瀬川にとって、久々となる先発出場。しかも、サイドバックではなく、自身が主戦場と位置付けている攻撃的なポジションでの出場だった。
「グランドが悪いから出してくれたのかな」
 韓国の厳しいピッチ状況を理由として挙げる瀬川に、「馬力があるから?」と確認すると、「グラウンドの良い・悪いでプレー変わらないんで、僕。高校まで土(の上)でやってきたし」と、さまざまな経験を経て積み上げた厚みを垣間見せた。
「とにかく前に走って、相手のラインを下げて、守備でしっかりガチっと守ってと(鬼木達監督から言われた)。ちゃんと戦術的な理由で僕を選んでくれたと思いますけど、確かに気合は入りましたし、ちゃんとそれが結果に出てよかった」
 こう安堵も浮かべながら、「悠樹にも頑張ってもらって、一緒に出たいな」とも続ける。川崎は10月1日にホームでACLE第2戦として韓国・光州戦を迎える。大島僚太が負傷したことで新潟戦では山本悠樹にチャンスが巡ってきたわけだが、
「ここで悠樹の価値が出せると思うから、チャンスをしっかりモノにしてほしい。昨日はアシストもして、悠樹の存在感はあったと思うので、続けて(その能力と結果を)出して行ってほしいな」
 その思いは、表面上だけのものではない。というのも、「昨日は笑顔も多かった」と、ふだんの表情もよく観察しているからだ。
「あいつはポーカーフェイスだから」
 いたずらっぽくこう話す瀬川の笑顔と気配りが、チームの見えない部分で多くのものをもたらしている。

(取材・文/中地拓也)

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