■「とにかく自分のよさを消さないように」

 それでも、山本は川崎での日々を「腐らずに済んだところがある」と振り返る。家族やクラブスタッフとともに、山本を支えていたのがMF瀬川祐輔だったという。照れくさい思いを苦笑いで覆い隠しながら、山本が感謝の言葉を紡いだ。

「瀬川くんは瀬川くんなりに苦しんでいるはずなのに、いつも楽しそうにしてくれていてすごく助かりましたし、いい感じの距離感で声をかけてくれました。あまり面と向かっては言えないですけど、瀬川くんには感謝したいと思います」

 湘南から加入して2シーズン目の瀬川は、MF登録ながら不慣れなサイドバックやウイングで奮闘していた。それでも穏やかな笑顔を常に絶やさない。心をなごませてくれた立ち居振る舞いを思い出した山本は、図らずも涙しそうになった。

 中盤の底にアンカーを配置する形から、左右にボランチを並べる形へ本格的に移行した後半戦。その一角を担ってきた大島僚太が、名古屋グランパスとの前節で負傷退場。中4日で迎えた新潟戦で、山本は川崎で9度目の先発に指名された。

「うまくいかないといろいろと見失いがちになるので、とにかく自分のよさを消さないように、苦しいなかでも自分が取り組むべきプレーをずっと模索してきました。別に誰かのリザーブでいようと思ってもいないし、その意味でもあまり外野の声には惑わされずに、自分がやるべきプレーをやり続けようと考えてきました。今日はいつも通り落ち着いてプレーするのと、それでも絶対に緊張するし、ミスもするだろうし、うまくいかない場面もあるので、それも受け入れよう、と」

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