■上田綺世の集中力と理不尽力
その時もボックス内で合わせようと飛び込んでいた上田はPKキッカーを任させると、スタンドからと思われる緑色のレーザーポインターを顔付近に当てられても、気にするそぶりも見せずに強烈な一撃をゴール左隅に打ち込んだ。上田本人によると、レーザーに関しては集中していて分からなかったそうだ。相手GKと駆け引きするというより、自分の間合いをしっかりと作って、狙ったコースにパワフルなシュートを打ち抜く。それさえ完璧にできれば、GKがどういう予測をしていようと止められない自信があったのだろう。
待望の得点はPKではあったが、これが呼び水となったのか、後半開始2分には入ったばかりの伊東純也が右ワイドから折り返したボールをコントロールし、振り向きざまに鋭い弾道のシュートを叩き込んだ。ただ単に、パスを正確に受けるのではなく、あえて半身ずらして相手ディフェンスのタイミングを外す妙義と、直後に放たれたパワフルなシュートの組み合わせは、まさしく理不尽と言うべきもの。しかし、こうした並のストライカーでは狙うこともできないような形からの豪快なフィニッシュは上田の真骨頂と言えるだろう。
さらに力強いポストプレーで、中盤から飛び出した守田英正による3点目をアシストした上田が、この試合のMOMに輝いたのは当然と言える。
(取材・文/河治良幸)