■「刺激的で面白い試合ができているからいいで済まされるクラブなのか」

 7月以降で白星から遠ざかっている浦和が再出発を期す象徴として、トップ下で小泉が先発した町田戦は2度のリードを奪いながら2-2で引き分けた。失点したのは後半開始直後の49分と終了間際の98分。最も警戒すべき時間帯だった。

 さらにつけ加えれば、2失点目はMF松尾佑介がダメ押しの3点目を決めながら、ゴールと関係のない局面でFW二田理央がファウルを犯したとして、ため息とともに取り消された直後に喫していた。小泉はあえて厳しい言葉を発した。

「理央のファウルにしても最後の失点にしても、したたかさが足りないし、冷静さが足りないし、集中力も足りない。今シーズンはこういったミスで勝ち点を取り損ねる展開が多い。試合に出ていないなりに自分がずっと思っていたのは、試合内容がよくなってきたからいいとか、刺激的で面白い試合ができているからいいで済まされるクラブなのかどうか。そこは見直さなきゃいけないと思っている」

 自身は63分にMF長沼洋一との交代でピッチを後にしていた。ベンチで勝利を祈り続けていたからこそ、いまの浦和に足りないものがよくわかった。

「宏樹くんや憲くん、ショルツがもっていたものを、いまの僕たちがもっていないからこうなっている。それでもこのメンバーで成長するしかないし、成長していかなきゃいけない。そうじゃないと、またこうして勝ち点を取りこぼしてしまうので」

 小泉が言及したのは、シーズン途中の今夏に浦和を去ったキャプテンのDF酒井宏樹、ベテランのMF岩尾憲、そして守備の要アレクサンダー・ショルツの名前。自分自身にも矢印を向けながら強い覚悟とともに浦和を鼓舞し、復活へと導こうとする小泉を支えていたのは、高校時代からの盟友にかけられた

「ある言葉」だった。

(取材・文/藤江直人)

(後編へ続く)

(2)へ続く
  1. 1
  2. 2