■チームの結束を象徴する「スタンドの姿」

 なかでも樋口はチーム立ち上げ時の第1次キャンプからのメンバーで、このチームのなかではズバ抜けた大人であり、リーダーシップも申し分のない選手だった。この年の3月には、選手投票でサブキャプテンに選ばれていた。

「おれたちの分も頑張ってくれ」という樋口に、キャプテンの尾崎はこう言った。

「ワールドユースは絶対に頑張ってみせる。これは2人だけでなく、1次合宿から参加した仲間の分もだ」。1年半の活動に参加した選手は、89人にものぼっていた。

 1979年8月、おそらくその誰もが、日本ユース代表を、最後のピッチに立った11人の選手たちを見守り、声援を送っていただろう。日本の3試合が行われた国立競技場のスタンドには、日の丸の小旗を手にした樋口の姿があった。そこに、このチームの結束が象徴されていた。

「この大会をスタートとして、世界に羽ばたいてほしい」

 チーム解散に当たって、松本監督は選手たちにこれからが大切だと語った、この1年半の経験を、日本代表になって、指導者になって、日本のサッカー発展のために役立ててほしいという気持ちだった。

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