サッカーは美しいスポーツであるが、そうではない部分も存在する。審判に選手たちが執拗に異議を唱える場面も、そのひとつだ。観る者をげんなりさせる「サッカーの敵」とも言うべき試合のワンシーンを消し去る2つの方法を、サッカージャーナリスト大住良之が提言する。
■失点チームの異議なしで「無」に
と同時に、VARの「プロトコル(実施手順)」の全面的な見直しも、こうした醜い事態を解消するのに役立つのではないか。
VARは90分間のすべてをチェックしているが、実際に判定に「介入」できるのは、前述の4つの状況に限られている。すなわちファウルの判定のミスがあっても、それが得点やPKや退場に結びつかない限り、介入はしない。してはならないのである。しかし、選手たちはひとつのファウルにも強く反応し、それが異議や取り囲みにつながる。
その一方で、失点したチームが何の異議も示していないのに、VARが小さな「反則」を探し出して得点を無にすることもある。
もちろん私は、パリ・オリンピックの男子準々決勝、日本対スペインの前半終了間際の細谷真大の「得点」の話をしている。
パーフェクトと言っていい美しい攻撃から、信じ難いテクニックと身のこなしで生まれたゴール。スペイン選手たちも、誰もが「やられた」と思った。ところがVARは、藤田譲瑠チマがパスを出した瞬間に、細谷のシューズのかかとが、スペインのゴール側から細谷に体をつけてマークしていたスペインDFの体よりわずかに出ていたことを見つけ出し、ゴールの判定を取り消したのである。