サッカーは美しいスポーツであるが、そうではない部分も存在する。審判に選手たちが執拗に異議を唱える場面も、そのひとつだ。観る者をげんなりさせる「サッカーの敵」とも言うべき試合のワンシーンを消し去る2つの方法を、サッカージャーナリスト大住良之が提言する。
■「万が一」を探してくれるVAR
異議や取り囲みを撲滅するには、もうひとつの方法がある。VAR(ビデオ・アシスタントレフェリー)の活用である。
2018年にIFABが厳格に定めた「プロトコル(実施手順)」により、VARは、「得点」「PK」「一発退場」、そしてイエローカードなどの「人違い」の4点に限り、ピッチ上のレフェリーが「はっきりとした明白な間違い」をしたと思われたときにのみ介入し、オフサイドなど「事実」に関することであればレフェリーにチェックの結果を伝え、そうでなければ映像による確認を薦めることができるとされている。
すなわち、守備側にしてみれば、失点したとき、ペナルティーエリア内の反則で笛を吹かれてPKになってしまったとき、そして一発退場になったときなど、「一大ピンチ」のときに、まるで裁判所のように、VARがもれることなく守ってくれるのである。文句のつけようのないゴールや、「ああ、やっちゃった」というファウルもある。だが、VARシステムが使われている試合では、そんなときでもVARがきちんとチェックし、「万が一」のことを探してくれるのである。