■重要な決定機をモノにできず

 それがまさかのVAR介入でオフサイドと判定され、ゴールを取り消されたダメージは少なくなかった。日頃、冷静な大岩剛監督が大きく両手を広げて納得いかない様子を見せたのだから、選手たちは胸中は大いに想像できる。とはいえ、ルールに則ったジャッジである以上、受け入れざるを得ない。

 彼らは迅速に切り替え、前半終了間際には山田楓喜(東京V)の右CKから細谷のヘッドがポストを直撃する決定機も作っている。ただ、2つの重要な得点チャンスをモノにできなかったことは、その後に響いたと言わざるを得ないだろう。

 後半の日本も決めきれない時間帯が続いた。そこでスペインが老獪だったのは、ワンチャンスを確実にモノにしてくるところ。後半28分のフェルミン・ロペスの2点目はまさにそう。セルヒオ・ゴメス(レアル・ソシエダ)が左CKを蹴った瞬間、ペナルティエリア中央の少し外側付近がガラリと空いていることをフェルミン・ロペスは見逃さず、右足を一閃。”国防ブライアン”の異名を取る小久保玲央ブライアン(シントトロイデン)も反応しきれなかった。この瞬間、試合はほぼ決したと言っていいだろう。

 後半41分の右CKからのアベル・ルイス(ジローナ)のダメ押し点にしてもそうだが、スペインは「ここ一番の決定力」が圧倒的に高かった。それとは対照的に、日本はフィニッシュの部分で力不足を露呈。終わってみれば0-3の完敗を強いられた。エース・細谷は2つのビッグチャンスを筆頭に存在感を示したが、日本を勝たせる得点は奪えなかったし、それ以外のアタッカー陣も迫力不足は否めなかったのは事実だ。

 パリ世代は前々から「攻撃のタレントはそこそこいるが、守備の方が人材難」と言われてきた。が、実際に大一番を戦ってみて、粘りに粘った守備陣以上に攻めのインパクトが足りないように見受けられた。そこは認めなければいけない点ではないか。

 オーバーエージ(OA)も久保建英(レアル・ソシエダ)もいない中、スペインを追い詰めたのは評価に値するが、チーム全体の実力差があったこともまた事実。それを今後の糧にしなければ意味がない。

(取材・文/元川悦子)

(後編へ続く)

(2)へ続く
  1. 1
  2. 2