■試合後「涙した」エースストライカー

「唯さんに蹴ってみたらと言われて…」
 最初は、プレースキッカーの長谷川唯に蹴ってもらおうと思っていたという北川。だが、長谷川に譲られる形で蹴ったボールは、美しい弧を描いてゴールキーパーの手を逃れ、ゴールネットに吸い込まれた。
 オリンピック初出場で初ゴール。これは、北川が「持っている」証拠だろう。
 一方で、出場機会に恵まれながらも「ゴールが遠かった」ストライカーもいる。エースFWの田中美南だ。ブラジル戦ではPKを止められ、さらに、見事な反転からのシュートもキーパーの正面。再三の決定機を逃し、試合後には涙を流す場面もあった。
 ナイジェリア戦の田中は、序盤から積極的だった。先制ゴールの10分後、自陣の高橋はなから出た鋭い縦パスを軽く触って軌道を修正して右奥のスペースに流すと、走り込んできた守屋都弥が追いついて絶妙なクロスを上げる。
 左から中央に走り込んできた植木理子のヘディングシュートがバーを叩き、跳ね返ってきたところを田中が倒れ込みながら押し込み、チーム2点目を挙げた。そのスライディング弾は、まさに魂のシュートと呼ぶにふさわしい、気合いの入ったものだった。
 試合後、「本当にゴールが欲しかった」と語った田中を含め、『サッカー批評』では3人の集合写真を撮影。田中、復活を遂げた北川、そして守屋都弥。守屋はスペイン戦で負傷離脱した清水梨紗の代わりに、左サイドバックを任され、ナイジェリア戦の田中のゴールにつながるクロスを上げている。
 3人は肩を組むと、田中は左手にユニフォームをかかげた。RISA――スペイン戦で負傷し、離脱を余儀なくされた清水梨紗のユニフォームだった。
「いつでも一緒」――3人は、ここにはいない1人の思いを背負い、強敵アメリカとの大一番を迎えるのだろう。そんななでしこジャパンを、皆さんも応援しましょう。

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