■主流は固定式も「スベる選手に栄冠なし」

 近年のサッカーはたくさん走らなければならない。10年ほど前と比較しても、走る距離は大きく上がっている。スプリントの回数も格段に増えている。そうしたなか、選手たちは、より軽く、よりフットワークのいいシューズを好むようになった。以前は、固いグラウンドでしか使われなかったスタッド固定式のシューズが主流となったのである。

 しかし、最近のJリーグのピッチは、試合前やハーフタイムにどしゃどしゃと水を撒き、ただでさえスベりやすくなっている。そうしたグラウンドで不用意にスベり、チャンスを逃したり、相手にあっさりとかわされてしまうのは、プロとしてどうなのだろう。

 FWやMFなら、より疲労の少ない「固定式」のほうが好ましいかもしれない。多少スベっても、差し引きすればプラスのほうが多いかもしれない。だが、スベらない「取り替え式」を履くことが望ましいポジションもあるのではないか―。

 守備の選手、なかでもセンターバックとGKである。とくにGKには、取り替え式は必須ではないか。肝心なときにスタッドが芝生をつかみそこね、スベるようなことなどあってはならないポジションだからである。

 スベる選手に栄冠なし――。

 もし私がサンフレッチェ広島の監督なら、取り替え式を履けと大迫敬介に厳命するだろう。しかし、その後の試合を見ても、大迫がシューズを変えた形跡はない。あの川崎戦の「スベり」は、見逃されたのだろうか。プロとして、これはどうしたことかと、猛暑の中、深夜のテレビ観戦のせいでウトウトしながら、冷房の効いた部屋で私は考えてしまうのである。

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