サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト大住良之による、重箱の隅をつつくような、「超マニアックコラム」。今回のテーマは、クツ底のあいつ。
■日本代表ゴールキーパーが演じた「失態」
サッカー選手は、なぜあんなにスベるのだろうーー。
スライディングタックルではない。相手に対応して急激にターンしようとするとき、あるいは方向転換で相手を抜き去ろうとするとき、足をスベらせて転んでしまう選手を、1試合のうちに必ず数回は見る。
攻撃時であれば、無数にある失敗のひとつで、芸人の「スベり」程度のものかもしれない。しかし、DFやGKとなると、試合結果に影響を与えかねない深刻な事態だ。
6月29日の川崎フロンターレ×サンフレッチェ広島で、広島の日本代表GK大迫敬介が足をスベらせ、先制点を与えてしまうという「失態」を演じた。あまりクローズアップされなかったが、失点したか・しないかに限らず、GKとして試合中に足をスベらせるなど、絶対にあってはならないことだ。
0-0で迎えた前半23分、DF佐々木旭のボール奪取をきっかけに川崎が波状攻撃をかける。その「第5波」の攻撃。ペナルティーエリアから戻されたボールを受けた川崎MF瀬古樹が少し持ち上がってエリア外中央から左足シュート。
自分から見てゴール左隅に飛んでくると判断した大迫は、素早くステップを踏んでポジションを移動する。だが、瀬古のシュートは広島MF東俊希の体に当たって小さく浮き、ゴール中央に向かって跳ねた。素早く反応した大迫だったが、自分から見て右にダイブしようとしたときに軸となるべき左足がわずかにスベったのである。それでも懸命に跳んだが、完全にはじき出す力はなく、かろうじて両手でボールに触れただけ。ゴール前に転がったボールを、鋭く詰めた川崎FWマルシーニョが押し込んだ。