■「きれいごとでは済まない」それでも…

 こうした例を挙げるまでもなく、2024年の今、サッカー観戦あるいは応援が、かなり高価なものになっているのは明らかだ。誰よりも、ファンがそう肌で感じているに違いない。それがサッカーにとっていいことなのか、すべての関係者が、少し立ち止まって考える必要があるのではないか。

 カイ・サワベ氏の写真を、ぜひとも数分間眺めてほしい。このチケットを大事そうに両手で持ったファンの胸のときめきと、彼の日常の生活と、その中でのサッカー観戦の特別な意味、さらには、サッカーというものが社会に存在する意義を感じ取れないだろうか。

 プロサッカーの経営が「きれいごと」だけで済むものでないことは理解している。世界と対抗するために日本のクラブが、そしてJFAが資金力をつけなければならないこともわかる。しかし同時に、サッカーがファンや人々を幸せにするものであることを信じている人なら、カイ・サワベ氏の写真から何かを感じ、新しい方向性を模索する努力をしてくれるのではないかと、私は期待している。

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