■W杯西ドイツ大会「1635円の特等席」

 ワールドカップだから仕方がないって? 私が初めてワールドカップを見たのは1974年西ドイツ大会だったが、そのときには取材パスではなく、チケット観戦だった。その大会で私が見たハイライトは、ドルトムントでの「オランダ×スウェーデン」だった。そう、「クライフ・ターン」の試合である。私の席はメインスタンドの前から8列目。ヨハン・クライフのプーマのシューズの真っ白な靴底がキラッと光ったと思った瞬間、彼はマークする相手選手を置き去りにしていた。

 そんな「特等席」の値段が、わずか15マルクだった。当時のレートで約1635円である。

 この大会では、1次リーグの入場料は15マルクから30マルクだった。フランクフルトで行われた開幕戦だけは60マルクという特別な定価がついていたが、それでも約6540円という値段だった。

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