サッカーは日々、発展を続けている。取り巻く環境もまた、変化を続けている。だが、その肥大化は、はたして進化と呼べるものなのか。一枚の写真が投げかける「問い」について、サッカージャーナリスト大住良之が考える。
■「11月26日」に掲載された写真
カイ・サワベ氏は、私が敬愛するカメラマンである。
彼は写真とサッカーを愛し、上智大学在学中に何回か長期間の欧州サッカー取材をした後、1980年にドイツに移住、以後イタリアやフランスなどでも暮らし、サッカーの写真を撮ってきた。やがて彼の興味はスター選手やビッグゲームから離れた。そして世界の隅々まで広がり、人々の生活に結びついたサッカー、そしてサッカーとともに生きる人々そのものに強い興味を抱くようになる。
彼とは、私が『サッカー・マガジン』の編集部のスタッフだった頃に一緒に働くようになった。そして後に私が「トヨタカップ」の取材のために欧州と南米を往復するようになったときには、ドイツから来てもらってコンビで取材するようになった。写真だけでなく人生すべてに対する真摯な姿勢は、当時も今も変わることはない。
その活動の成果は、自ら筆をとったエッセイと、見れば見るほど深い意味を感じさせずにおかない写真でつづった『フットボール・デイズFootall Days』(2002年/双葉社刊)で鮮やかに見ることができる。そして、その出版から6年後の2008年には、ドイツで大型写真集『365 Fussball Tage(365サッカー日)』(Verlag Die Werkstatt社刊)を発表する。この写真は、その「11月26日」のページに掲載されている。