■藤野あおばの突破から生まれた「厳しい判定」
しかし、さまざまな形で想定が裏切られていくのもサッカーという競技ならではのことだ。
ナイジェリアという国は男子サッカーでも女子サッカーでも、その強靭な身体能力を生かしたプレーをするが、同じ西アフリカでも、ガーナはフィジカルを前面に出してくる国ではない。
そして、ガーナ女子代表を率いるスイス人のノラ・エリザベス・ハウプトゥル監督もパスをつなぐサッカーを志向することを明言していた。そのため、実際にガーナ選手と対峙した日本選手たちの間にも、「想定と違う」という違和感があったようだ。
日本が支配しゲームが進んだ23分にガーナのDFポーティア・ボアティエが一発退場となってしまった。
長谷川唯からのパスを受けた藤野あおばが突破にかかろうとしたところをファウルで止められた場面。たしかに得点機会阻止ではあったが、ガーナにとってはかなり厳しい判定だった。
これが、ワールドカップやオリンピック本番だったら「ラッキー!」と喜べるのだが、強化試合で相手に退場者が出たのでは、日本チームのためにも得にはならない。
1人少なくなったガーナは、1トップにいたメーヴィス・オウスを退けて17歳のDFステラ・ニャメキエを入れて、4-4-1システムで守りに入った。
相手の攻撃の圧力は下がり、ガーナ戦では4バック(熊谷紗希をアンカーに置いた4-1-4-1)で入っていた日本は、後方でDFが余ってしまう状態に。サイドバックをどこまで前に張らせるのか、どうやって守りを固めるガーナ陣に早くボールを送り込むのか……。試行錯誤が続く状況となってしまう。
また、合宿での強度の高いトレーニングで疲労をため込んでいるため動きにキレもなく、パス精度も落ちて、1人少なくなったガーナを攻め崩すことができずに、とうとうスコアレスのままハーフタイムを迎えてしまった。