■180度の方針転換「プロ容認から要求へ」

 オリンピックは、かつてはアマチュアだけの大会だった。「アマチュア」というのは、純粋に趣味として競技を楽しむ社会のエリートたちのことだ。彼らは仕事を休んで試合やトレーニングをこなすだけの経済的余裕があった。一方、労働者階級出身の選手たちは仕事を休んだら、収入が減ってしまうので生活していけない。そこで、クラブが収入を補填したり、報酬を支払うようになった。それが、プロ選手の始まりだ。

 労働者階級の間で盛んになったサッカーにはプロ選手が多く、オリンピックでも「プロ参加疑惑」が何度も浮上した。1964年の東京オリンピックではイタリア代表にジャンニ・リヴェラやサンドロ・マッツォーラといった有名選手が含まれていた。結局、イタリア代表は東京オリンピックを棄権した。

 ところが、1980年代に入ると、オリンピックを主催するIOC(国際オリンピック委員会)が180度方針を転換。プロ選手の参加を容認するようになり、さらに各競技のトッププロの参加を要求するようになった。

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