■「なんか臭いを感じることができた」
ボールはゴール右隅に入った。
イングランドは死に際からよみがえった。
イングランド側のスタンドも、やっと活気づいた。
延長戦。
ケインの狙いすましたヘッダー。91分、イングランドがスロバキアを2-1と逆転した。
ケインにボールを送ったトニーは言った。
「入ると思った。ホッとしたよ。なんか臭いを感じることができた」
「ひとつのゴールで大きく変わる。まだ、家に帰る準備はしていなかった。そんな夜だった」(サウスゲート監督)
アレナからゲルセンキルヘン中央駅に向かうギッシリ詰まったトラムも、デユッセルドルフ行きの電車も、イングランド勢はビールを手に大きな歌声を上げ続けていた。
残り時間2分が分けた明暗だった。
イングランドは強敵スイスと戦う。