今季のJリーグもシーズンを折り返した。さまざまな変化が見られる中、気になるのが横浜F・マリノスと川崎フロンターレの不調である。近年のJ1を席巻してきた2強は、なぜ急激に勢いを失ったのか。サッカージャーナリスト大住良之が考察する。
■鬼木監督が「1試合3点がノルマ」と語った川崎
だが、横浜F・マリノスと川崎フロンターレの「凋落」の最大の原因は、こうした要素以外にあるのではないかと、私は感じている。ひと言でいえば「イノベーションの欠如」である。
川崎では、2012年から2016年まで監督を務めた風間八宏が圧倒的なパスワークのチームをつくり上げ、2017年に就任した鬼木達監督がそれを継承して破壊的な得点力を持つチームに仕立て上げて初優勝。翌年も優勝を飾ると、2020年、2021年にも連覇。とくに三笘薫がJリーグで唯一フルシーズンプレーした2020年には、小林悠が14得点、レアンドロ・ダミアンと三笘が13得点、家長昭博が11得点と、4人もの「2ケタ得点者」を生み、チーム総得点88を記録した。
34試合で88得点。1試合平均2.59得点という高い比率である。この記録は、中山雅史が4試合連続ハットトリックを達成した伝説のチーム、1998年のジュビロ磐田(34試合で107得点、1試合平均3.15)に次ぐもの。鬼木監督就任から5シーズンで4回優勝、監督が「1試合3点がノルマ」とうそぶいたこの当時の川崎は、まさに「スーパーチーム」だった。