■「鬼さんの責任じゃない」
一方で、それに異論を唱えるのが小林悠だ。2010年にこのクラブでプロ入りして以降、苦しい時期も、栄光の時期も知っているワンクラブマンに話を聞けば、「いや、それは違います」と否定して見せる。
「いや、鬼さんは“自分の責任だ”って言いましたけど、どう考えても選手の責任だと思います」
小林は、まっすぐな目でそう説明する。2失点を喫した直後のピッチに投入された小林は、さらに1失点を浴びながらもヘディングでエリソンのゴールをおぜん立て。一矢報いるプレーを見せたが、「もっと存在感や力を出さなきゃいけないし、自分の力不足っていうのはすごく感じてます」とも、やはり、自らに矢印を向けていた。
監督ではなく、選手の責任――その理由を小林は、「プレーするのは選手なので、監督だけやろうとしても、それを実際にピッチで表現できるのは選手しかいないので、それが足りなかったと思いますし、もっとやらなきゃいけない」と話す。
そして、「連戦の中の天皇杯で、選手を信じて代えて使ってくれたのにもかかわらず、しっかり選手が応えられなかった」とも悔やみ、「鬼さんの責任じゃないと思うし、ピッチの中で戦ってる自分たちの責任だと思う。今日の試合後に鬼さんが言ったことは、僕は違うなと思いました」と力強く言い切った。熱を帯びたこの言葉は、チームに何よりも必要なものだ。
そして小林は、苦境を脱するために必要なことも説く――。
(取材・文/中地拓也)
(後編へ続く)