■今後を左右する7月
確かに酒井宏樹や岩尾憲に比べると、伊藤はやや発信力が足りないところがあるのは否めない。それは彼のみならず、安居海渡や佐藤瑶大、石原広教らを20代前半以下の面々を通して言えること。1人1人が必要な声かけを自ら行い、ピッチ上で積極的なアクションを起こしていけるような集団にならなければ、タイトルには手が届かない。湘南戦での衝撃的敗戦を踏まえ、彼らは現実の厳しさを再認識し、それぞれにやるべきことを整理・実行していくことが肝要だ。
そのうえで、失点数を極力減らす術を追求していくべきだ。22節終了時点の浦和の総失点は30で、町田やガンバ、神戸の17に比べると圧倒的に多い。酒井とアレクサンダー・ショルツという実績あるDFがいなくなった今、誰が最終ラインを引っ張っていくのか。もちろん守護神・西川周作は健在だが、佐藤らにはより自覚を持って取り組んでほしいところである。
「もともと試合に出たら『浦和を背負っている』と思ってやってるんで、あの2人が抜けたからっていうのは特にないですけど、試合に出てる以上、2人を超えるようなパフォーマンスと存在感を見せなきゃいけないなってのはつねに思いながらやってます。『2人が絶好調の時だったらどうしてたかな』というのも考えながらプレーしている。それをプラスにしたいですね」と佐藤も神妙な面持ちでコメントしていたが、偉大なプレーヤーと共闘してきた経験値は大きな財産。それを生かさなければもったいないのだ。
次節・7月14日の京都サンガ戦は石原が出場停止。その試合後には大畑歩夢もパリ五輪のため離脱する予定で、ますます守備陣の選手層が手薄になる。そういう時だからこそ、彼やマリウス・ホイブラーテンら守備陣、伊藤や安居海渡らボランチ陣を中心に、守りのすり合わせを徹底していくことが肝要だ。
ここで踏み止まれるか否か――。今季の浦和にとって7月は今後を左右する重要な時期になりそうだ。
(取材・文/元川悦子)