■攻撃面で「違い」を作る元日本代表ストライカー

 攻撃の軸は、齊藤夕眞(旧名あかね)が担っている。

 かつて浦和レッドダイヤモンズ・レディースやAC長野パルセイロ・レディースで活躍し、日本代表歴も持つFWまたはMFだ。

 2019年にいったんは引退を発表したものの、2020年暮れにV宮崎で現役に復帰した。168センチと日本の女子選手としては大柄で、競り合いの強さもあり、前線で攻撃の核となっている。戦術眼も高いし、何よりも豊富な経験があるので非常に頼りになる存在だ。

 ニッパツ戦で齊藤は、前半はツートップの下の位置でゲームを作っていたが、後半に入るとツートップの一角に入り、ポストプレーやドリブルシュートなどで攻撃をリードした。

 J1リーグでも、数年前までは川崎フロンターレ横浜F・マリノスのような攻撃型のチームが「2点取られても3点取ればいい」というサッカーで他を圧倒していたが、彼らに対抗して各チームが守備を強化することにつながった。そして、川崎や横浜FMの退潮とも相まって、このところ堅守型のチームが上位を占めている。

 かつて、攻撃サッカーで一世を風靡したガンバ大阪も、今シーズンはリーグ最少失点の守備力でタイトル奪回を狙っている。

「カウンタープレス型」は選手にハードワークを強いるだけに、「意識付け」に難しさはあるかもしれないが、チーム強化の順序として守備から入るのは当然のことだ。

 なでしこリーグ1部で昇格1年目で首位を走るV宮崎も、やはり挑戦者として当然のことながら選手たちのハードワークを武器に戦っているのだ。

 そして、G大阪では宇佐美貴史がトップ下的なポジションで活躍している。かつての“天才”宇佐美が、ハードワークのサッカーに順応しながらも、その独特の閃きと技術力によって攻撃のリズムを変え、攻撃にアクセントを加えているのだ。

 やはり、ハードワークをベースとして選手個々の能力を生かすサッカーをしている鹿島アントラーズでも、やはり鈴木優磨という選手がスペシャルなものを加えている。

 V宮崎も「カウンタープレス型」サッカーの中で、齊藤というFWが攻撃面で違いを作っているのだ。

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