■「あいつがこれからのフロンターレを引っ張っていってほしい」
試合経過はご存じの通りだ。1-1のまま後半アディショナルタイムに突入すると、新潟が90+7分に逆転弾を決める。ホームチームが劇的な勝利を手にするかと思われたが、山田新が90+11分に同点弾を叩き込む。
先述したようにリードした状態で山田に渡せなかったと悔やんだ小林に、背番号20の劇的なゴールについて聞くと、一瞬で笑顔になった。その笑顔は、同点弾という結果一つに対するものではなく、これから見るであろう大きなものへの期待感から来るものだということは、発せられる言葉から分かった。
「(交代時、)“絶対に決めてこい”って新に言いましたし、こういう試合で決めることであいつはどんどん成長していける」
そう話す小林は、「自分は若いとき、すごくそういうところがあった」と自身のこれまでの姿に山田の成長を重ね合わせる。本当に必要な場面で得点を取ることで、選手として大きく成長できるというのだ。
そして、こうも言う。
「あいつがこれからのフロンターレをどんどん引っ張っていってほしい」
これだけ期待を隠さないのも、すでにその一端を披露しているから。小林はさらに、「結果をしっかり残してるんで、これからもっともっと取ってくれる」とも続けた。
2―2という結果だけで喜んでいいものではない。しかし、その裏側で選手は闘志をピッチで表現しようとそれぞれの動きを見せていた。そして、それがこれからにつながる実感を手にしている。
ここから始まる連戦で、その闘志をさらに高められるはず。大きな期待を、新潟の地で手にした。
(取材・文/中地拓也)