■「ピッチに立てたのは色んな意味がある」
そこから大木武監督の熊本で才能が開花し、昨年は自分から志願してキャプテンに。苦手だったメディア対応もこなしながら精神的にも逞しくなった。そしてJ1に昇格した磐田への移籍を果たしたが、得意ポジションであるトップ下ではなく、左サイドでハードワークしながら、そこに攻撃のスペシャリティを加えるべく奮闘している。
そんな平川は東京について「自分が育ったクラブですけど、ある意味、プロの厳しさを教えられたクラブでもある。こうやって自分がまた、相手としてですけどピッチに立てたのは色んな意味がある」と語る。試合前のスタメン発表で平川の名前が呼ばれると、磐田側だけでなく、東京側のゴール裏やメイン、バックのホーム席から大きな拍手が起きた。
「それは分からなかったですけど、自分が最後、挨拶に行った時も拍手で迎え入れてくれましたし、すごい自分にも良い気持ちになりました」
そう感慨深げに振り返った平川には大きな目標がある。A代表で日の丸を付けること。一時は大きな挫折を味わい、苦しい時期を経験したが、そうしたことも糧にして、繊細なテクニシャンはチームの戦えるファイターへと成長を遂げた。
しかし、カタールW杯で”森保ジャパン”をコーチとして支えた横内監督も「彼はまだまだ、こんなものじゃない」と厳しくも、前向きに平川に対する期待を口にする。違いを作り出せる存在へ。これまで応援してきた人たちに、さらに成長した姿を見せていくために。平川の奮闘と成長のストーリーは続いていく。
(取材・文/河治良幸)