■初の戦術的な交代は「西ドイツ」名将

 1970年のワールドカップ・メキシコ大会では、西ドイツが交代を利用して画期的な戦いを見せた。多くのチームが交代を疲労の色の濃い選手や負傷者のために使ったのに対し、西ドイツのシェーン監督は初めて戦術的に交代を使うという手法を見せたのだ。

 シェーン監督は、この大会のためにウイングでプレーできる選手を4人用意した。ジギ・ヘルト、ラインハルト・リブダ、ヨハネス・レール、そしてユルゲン・グラボウスキーである。どの選手も所属クラブではセンターフォワードなどをこなしていたが、ドリブル突破を得意としていた。この4人を、シェーン監督は交代を交えながら自在に使って、相手守備を切り崩したのだ。

 なかでもグラボウスキーは、後半のなかば近くになって投入されることが多く、そのドリブルで相手を追い詰めた。彼は右でも左でも同じようにプレーができ、相手のサイドバックの能力や疲れ具合などを見ながら、シェーンはグラボウスキーを投入、相手の守備を突き崩した。交代選手の戦術的利用の有用性を示し、その後の世界のサッカーに大きな影響を与えたのが、シェーン監督だった。

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