■アメリカW杯イヤーの改正に「抜け道」

 その後、四半世紀、交代枠は「2人」に固定されていた。終盤の負傷に備えて1枠は取っておかなければならないから、戦術的な交代が使えない場合も多かった。早めに2人の枠を使ってしまったら、GKを狙われる、イエローカード覚悟で反則を仕掛けられるという恐れが十分あったのだ。

 1994年、アメリカで開催されるワールドカップの年のIFABは、「2+1」という交代に関する新ルールを決めた。従来の2人に加え、GKに限り、3人目の交代を許すというのである。これによって、2人の交代をより戦術的に使えるのではないかという狙いだった。しかし、これは馬鹿げた改正だった。

 ルールでは、主審に報告しさえすれば、GKとフィールドプレーヤーはいつでも入れ替わることができる(もちろん、ウェアは着替えなくてはならないが)。GKはまずフィールドプレーヤーとなり、その後GKとなった選手が他の選手と交代。この時点でGKと入れ替われば、実質的に3人のフィールドプレーヤーの交代ができるようになる。さすがのIFABもこの「抜け道」にすぐに気づき、翌1995年のルール改正で、ポジションに関係なく、1試合3人までの交代ができるようにした。

 その「交代3人制」が、また四半世紀後、コロナ禍という人類の誰も想像もつかなかった要因で「5人制」となり、恒久化されることで、サッカーは大きく変化した。

 たかが交代、されど交代。「交代5人制」によって、これまでよりも数十倍に広がった「戦術的な可能性」の海の真っただ中で、監督たちはホワイトボードを中心にしてコーチたちと頭を寄せ合い、「最善の解」を求めて知恵を絞っているのである。

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