■4つも5つも前のプレーで「得点が取り消し」に
だが、VARが正式に認可されて6年、違和感や不快感が一向に消えないのは、このプロトコルのせいではないかと、私は考えるようになっている。少なくとも、これを疑い、別の運用手順を考えるべき時に来ているのではないか。
たとえば得点が決まり、攻撃側が狂喜する一方で、守備側がまったく文句を言わず、ただガックリと肩を落とし、次のキックオフの準備をしようとしているときに、突然レフェリーが試合再開を止め、VARチェックが入っていると告げるのを見ることがある。そして数分後、得点が取り消される。VARがチェックしたのは、得点から4つも5つもさかのぼったところのプレー。「VAR用語」で言えば「APP(attacking possession phase)」、平たく言えば得点につながる攻撃が始まった時点からのプレー内に、何か攻撃側の反則があったというものだった。
たしかに「正しい」かもしれない。しかし、こんなものが必要だろうか。すべてVARの「プロトコル」を厳格に適用している結果なのである。